アルミ合金鋳物について詳しく教えてください。
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アルミ合金鋳物とは
アルミニウム合金を鋳造したものがアルミ合金鋳物です。アルミ合金鋳物は砂型金型用とダイカスト用の二分されます。アルミは鉄よりも融点が低い(660℃<1538℃)ため、鉄鋼製品と比べて耐熱性は劣りますが、融点が低い分、鋳造しやすく熱処理が容易なため、用途に応じた様々な機械的性質を得られます。
アルミ合金を使うメリット
材料としてアルミ合金を使うメリットは以下のものが挙げられます。
・軽い(鉄の約3分の1の密度)
・比強度(=引張強さ÷密度)の高さ(つまり軽いのに強い)
・加工性の良さ(切削しやすく、鋳造もしやすい)
・アルマイト処理などの表面処理のしやすさ
・低温脆性がない(鉄は低温下で脆くなる低温脆性を起こす)
・電気伝導率、熱伝導率の良さ(それぞれ鉄の約4倍と約3倍)
・非磁性体(鉄は強磁性体。磁性が悪影響となる電子機器への利用ができる。)
・リサイクルしやすい(非磁性体なので分別しやすく、リサイクルの方が省エネになる。)
アルミ合金鋳物の種類
先に述べた通り、アルミ合金鋳物は砂型金型用とダイカスト用に二分されますが、それぞれJIS H5202(アルミニウム合金鋳物)とJIS H5302(アルミニウム合金ダイカスト)としてJISに規定されています。
また、アルミ合金にはA2017などのAに4桁の数字で分類されるアルミ合金がありますが、こちらはJIS H4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)に規定されている展伸用アルミニウム合金です。成分が似ているものもありますが、機械的性質が異なるため、アルミ合金鋳物とは別物として扱います。
A.アルミニウム合金鋳物
1種~9種の計16種類がJIS H5202に規定されています。AC3AとAC7Aは非熱処理型の合金です。また、8種と9種の合金は金型鋳物用合金ですが、それ以外は砂型と金型の両方に対応しています。
①AC1B
銅を主要添加元素としたAl-Cu系のアルミ合金鋳物です。機械的性質に優れ、切削性も良いですが、鋳造性に難があります。自動車部品や架線用部品、重電用部品など強度が必要な部品に用いられます。
②AC2A、AC2B
1種の銅を減らして、ケイ素を加えたAl-Cu-Si系のアルミ合金鋳物(ラウタル)です。溶接性、被削性が良く、1種よりも鋳造性が良いです。AC2BはAC2AよりCu-Si含有比率が多くなっています。一般用としての材料で、シリンダヘッド、マニホールド、デフキャリア、ポンプボディ、バルブボディ、クランクケース、クラッチハウジングなど多くの自動車部品に用いられています。
③AC3A
ケイ素を主要添加元素としたAl-Si系アルミ合金鋳物(シルミン)です。流動性が良いため、カバー、ケース、ハウジング、カーテンウォールなどの薄肉・複雑形状の鋳物に適しています。溶接性、耐食性に優れますが、被削性が悪く、機械的強度は比較的低いです。
④AC4A、AC4B、AC4C、AC4CH、AC4D
3種の欠点を補うため、ケイ素の量を減らしてマグネシウムまたは銅を添加したアルミ合金鋳物です。AC4Aはマグネシウムを添加したAl-Si-Mg系合金(ガンマーシルミン)で、流動性、耐震性、靭性に優れ、船舶用・車両用エンジン部品などの強度が要求される部品に使用される。AC4Bは銅を添加したAl-Si-Cu系合金(含銅シルミン)で鋳造性、溶接性に優れ、引張強さが比較的高めですが、伸びに乏しい素材です。AC4CはAC4Aからケイ素とマグネシウムを減らした合金で強度が少し減りますが、鋳造性、溶接性、耐震性が良いです。AC4CHはAC4Cに加工硬化調質を施した合金で高級鋳物に用いられます。AC4Dは銅もマグネシウムも添加したAl-Si-Cu-Mg系合金で、機械的性質、耐熱性、靭性に優れ、水冷シリンダヘッドなどの耐圧性を要求する部品に用いられます。
⑤AC5A
AC5AはY合金とも呼ばれるAl-Cu-Ni-Mg系アルミ合金鋳物です。高温環境下での引張強さに優れますが、鋳造性に難があります。ディーゼル機関用ピストンなどに用いられます。
⑥AC7A
AC7Aはヒドロナリウムとも呼ばれるAl-Mg系アルミ合金鋳物です。強さと伸びが良く、優れた機械的性質を示しますが、鋳造性が劣ります。架線金具、船舶用部品、事務機器用などに用いられます。
⑦AC8A、AC8B、AC8C
AC8A、AC8B、AC8CはAl-Si-Cu-Ni-Mg系アルミ合金鋳物です。熱膨張係数が小さいことからローエックス合金とも呼ばれます。耐熱性、耐摩耗性に優れるため、熱機関用ピストンや軸受などに用いられます。
⑧AC9A、AC9B
AC9A、AC9Bも8種と同じAl-Si-Cu-Ni-Mg系アルミ合金鋳物です。8種のものからケイ素の含有量を約20%に多くした合金で、8種と同様、熱膨張係数が小さく、耐熱性、耐摩耗性に優れますが、切削性や鋳造性に難があります。熱機関用ピストンや軸受などに用いられます。
B.アルミダイカスト
アルミダイカストとはアルミ合金を溶かした溶湯に圧力をかけて金型に注入し成形していく鋳造法及びダイカストによる鋳物のことです。特徴として、鋳物でありながら寸法精度が出せる点、量産に向いている点等が挙げられます。アルミダイカストでは通常の鋳造よりも速い溶湯注入が必要なため、高い流動性が求められます。そのため、アルミダイカストの成分はアルミ合金鋳物の成分とやや異なる点があります。例えば、鉄は通常のアルミ合金鋳物では不純物ですが、アルミダイカストでは金型への粘着と溶湯による金型の腐食を防止するため意図的に加えられています。
①ADC1
Al-Si系アルミダイカストで、シルミンに相当するものです。鋳造性、耐食性に優れ、薄肉などの複雑形状に適していますが、強度は低めなので、高強度を要求する部材には不向きです。用途として、自動車のメインフレームやフロントパネル、ホームベーカリー用内釜やエスカレータ部品に用いられています。
②ADC3
Al-Si-Mg系アルミダイカストで、衝撃値、耐力、耐食性に優れるが、鋳造性がADC1と比べてやや劣ります。用途として、自動車のホイルキャップ、エンジンマウントブラケットや二輪車のブラケットマフラ、クランクケース、ブラケット、ホイール、フレーム、自転車のホイール、船外機のケースなど幅広く用いられています。
③ADC5
Al-Mg系アルミダイカストで、アルミダイカストの中で最も耐食性に優れます。伸びや衝撃値にも優れますが、鋳造性が良くないため、複雑形状のものには不向きです。用途として、船外機のプロペラ、シリンダ、インペラ、農機具の振動アーム、つめ押え板、植え付けアーム、釣り具のベールアームレバー、クリック、スプールなど耐食性の特徴を生かした用途に用いられています。
④ADC6
ADC5と同じく、Al-Mg系アルミダイカストで、ADC5に次ぐ耐食性とADC5より若干良い鋳造性を持ちます。用途として、二輪車のバンドレバー、ウインカホルダ、ウインカベース、フットレスト、ハウジングクラッチ、ブラケットマフラ、ピストン、クランクケース、シグナルランプ、ブレーキレバー、クラッチレバー、船外機のプロペラ、ケースウォータポンプ、プロテクタバーエンド、電算機の磁気ディスク装置、キャリッジ、ゴルフ用品のメタルヘッド、ソールカバーなど幅広く用いられています。
⑤ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Z
ADC10とADC12はAl-Si-Cu系アルミダイカストで、機械的性質、被削性、鋳造性に優れます。アルミダイカストの生産量の内、約90%以上がADC12といわれており、そのほとんどが自動車部品に用いられています。特殊な要求があるものを除けば、ADC10とADC12でほとんどの部分に適用することができます。Zが付いている規格は国際規格との整合性を取るため、Znを一定量含んでいても良いとした規格です。用途として、数多くの自動車部品、その他多くの部品に用いられている。
⑥ADC14
ADC14はAl-Si-Cu-Mg系アルミダイカストで、耐摩耗性、湯流れ性、耐力に優れるが、伸び、耐衝撃性に劣ります。用途として、自動車のオートマチックトランスミッション用オイルポンプボディ、ハウジング、カークーラコンプレッサハウジング、カークーラシリンダブロック、ミッションシフトフォーク、二輪車のインサート、ハウジングクラッチなどに用いられています。
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